ロボティクス
ロボット・・それは自律したハードウェア。
2022年9月10日更新
ロボティクスとはロボット工学のことです。
ゲーム、アニメのタイトルに使われるようにもなり数年前に比べると知られる言葉となりました。
JIS規格では「2軸以上がプログラム可能で,一定の自律性をもち,環境内を移動して所期のタスクを実行する作動メカニズム」と規定されています。
「ハードウェア × ソフトウェアで構成され自律した作業をする機械」ということであり、必ずしも人型(ヒューマノイド)ということではありません。ですがハードウェアを伴うということが定義のポイントとなります。そこはRPAとは違いますね。
マニュピレーター
なのでロボティクスでは必ずしも人型という定義はされておらず、必要に応じ様々な形体で開発されます。
例えば、コミュニケーションが目的のPepperは顔や手があり、掃除ロボットのルンバは丸形、それぞれ目的に応じた形に作られていますね。自律して飛べばドローンもそこに入るでしょう。
工場にあるマニュピレーター(腕型ロボット)もそうです。これらはどんな作業にも対応するというより作業目的が決まった上で開発されており、単機能ロボットといわれています。
二足歩行は機械化できないと言われていた時代に発表された、ホンダのASIMOはセンセーションを巻き起こしました。
その結果、それまでフィクションの世界のものとされてきたヒューマノイド(人型ロボット)に大きく注目が移ります。直後から二足歩行開発に成功する企業が多く現れ、ヒューマノイドが急激に発達。ホビー製品も多数発売されるほどになりました。
現在はヒューマノイド型も単機能型も分け隔てなく用途に合わせた開発がされており、幅広く製品が展開されています。このように製品の幅が広がっていくのは他の工業製品と変わりありません。
また、ボストンダイナミクス社が発表している動物を模した四足歩行タイプもかなりの進化を遂げています。動画をご覧になっている方も多いと思いますが、スムーズな動作、負荷をかけられても倒れないなどの安定性は目を見張るものがあります。
それらの進化が著しいのは、レスキュー、原子炉や深海、宇宙空間など人が立ち入れない場所でのでの活動も重要な用途だからです。もちろん海外では軍事目的もあります(日本では軍事目的での開発は禁止されています)
それは東日本大震災を機に、ロボティクスに求められるものがそちらに大きく傾いたからとも言われています。
ヒューマノイド
これだと戦闘用ですね(笑)
自律性に欠かせないAI
そしてロボティクスにおいて今後重要になるのはAIです。
そのアルゴリズムは大きく四つ。
①if-them
「もし〇〇なら〇〇する」というように特定の条件でどう行動するかの設定をします。
「もし何かにぶつかったら、方向転換をする」といったもので、コンピュータのプログラム言語とほぼ同様といえるかもしれません。
②推論・検索アルゴリズム
名前の通り、命令された作業を行う際に、その過程で起きることを自ら推測し工程を組み立てます。その推測の方法は用途に応じ人が教えます。例えば移動運搬を作業とするロボットの場合、最適な順路を自ら推測します。
既にダイクストラ法やエースターなど基本アルゴリズムがあり活用されています。
③機械学習アルゴリズム
ハードウェアが発達し、一台のロボットに要求される作業が複雑化していくと、if-themの数が圧倒的に増えることになりました。するとすべてを人が設定することがほぼ不可能となります。そこで開発されたのがこのアルゴリズム。AIが状況に応じたif-themを自ら学習していきます。将棋や囲碁AIは基本的にこれを使っています。
ですが、将棋などと違い、屋外などでの実作業が伴うロボットの場合、段差の高さや風の強さなど、人間側がすべての条件を事前に想定しきることが出来ません。とてつもない手間をかけてもアルゴリズムが完成しないという限界が出てきました。
④ディープラーニング
そこで活用されているのがディープラーニング(深層学習)です。
これはパターン認識をベースとしています。パターン認識とは様々なものを見たり聴いたりし、そこから特定のパターンや共通の特徴をAIが自分で認識し取り出していく技術です。要するに作業の要点をロボット自身で見つけていけるアルゴリズム。
パターン認識はニューラルネットワークという人間の脳の神経細胞ネットワークをモデルにしています。なのでディープラーニングはより人間の脳に近い働き方をします。
ここで重要になるのがカメラやマイクなどAIが情報をとるためのセンサー技術です。カメラや各種センサーはハードとなります。
自動運転などは既にディープラーニングが活用されていますが、ここまで来ると自動車もハードウェア×ソフトウェアとなりロボットの範疇に入るかもしれません。昔ヒットしたの海外ドラマのようですね(笑)
AIとつりあうハードウェアが必要となる
四つのアルゴリズムを見ると人の成長にも見えます。
冒頭でロボティクスとは「ハードウェア×ソフトウェア により自律して作業する機械分野」という定義をご紹介しましたが、ディープラーニングまで来ると、学習さえも自律していく、自ら学ぶところまで到達します。
そして高度な作業が可能なソフトウェアが出来れば、それに応えるハードウェアが必要となります。
高度な作業が可能なハードウェアが出来れば、それを操作できるソフトウェアが必要となる。
特に情報を得るセンサー類が重要となります。pepperならば会話するのでマイク、ルンバであれば走行や位置情報にかかわるもの。その機器の目的により必要なセンサー類は変わります。またその精度が上がればより高度なAIアルゴリズムを使うことができる。
F1に例えれば、高性能な車には腕のいいドライバーが必要となり、またその逆も然りとなります。
そのようなイメージかもしれません。
RPAは「ロボティック」
RPAはロボティック・プロセス・オートメーションの略です。
「ロボティック」とされているのはあくまでソフトウェアロボットでありハードウェアを含まないからでしょう。「ロボティクス」と「RPA(ロボティック)」混同される定義ですが、現実には定義などにこだわることなく必要に応じて使い分けられています。
そしてさらに広がっていくでしょう
さらに現在注目されている考え方として「ロボティクス×メカトロニクス」や「SCADA」などがあります。
「ロボティクス×メカトロニクス」はロボティクスの考え方に、電子工学や機械工学、情報工学など様々な工学概念が組み合わさるもの。
冒頭で述べたように、これまでの「ロボット」というイメージから離れ、用途に応じた多様な形のロボットが現れるでしょう。
自律し学習するタクシーや寿司ロボット・・・それ以上のものが現れるかも。
個体によって稼ぎや腕前が違うなど出てくるかもしれませんね。
「SCADA(スキャダ)」は産業制御システムの概念。
つながりのあるプロセス上の各システムや機械を一括で管理制御。情報の可視化で人間が管理しやすくもします。
ロボット同士やそれ以外のハードウェア、例えばマニュピレーターや自動車など。またそれらに接続されているPC上のソフトウェアやRPAなどなども同一ネットワーク上で管理されれることもあるでしょう。するとそれはIoTとも言えるかもしれません。
最近では「ロボティクスオートメーション」という言葉もよく検索されているようです。ハードウェアがあればロボティクスの定義を満たしているためロボティクスオートメーションというものも出てくるでしょう。
これらはウィキペディアなども参照していますが、概念が広範囲で一言で言い表すことが難しいものとなっています。
概念自体の変化や新たな考え方がこれからも次々現れるでしょう。
参考文献
「ロボット ー それは人類の敵か、味方か」中嶋秀朗/ダイヤモンド社
「最強に面白い‼人工知能 ディープラーニング編」監修 松尾豊/ニュートンプレス